2010年1月1日
東京都知事 石原慎太郎

平成二十二年 知事年頭所感

明けましておめでとうございます。

新しい年が皆様にとって希望に満ちた幸多き年でありますよう、心からお祈り申し上げます。

二十一世紀も今年で十年目を迎えました。かつて期待した明るい新世紀とはいささか様相が異なり、経済の先行きは混沌とし、地球温暖化などの極めて困難な事態にも直面しております。

そのような中、東京の人口は千三百万人の大台を超えようとしています。

この国家に匹敵する大都市東京は、長い歴史に培われた豊穣な伝統文化や最も著名な食のガイドブックも世界一と認める食文化、世界に誇る最先端技術を生み出す多くの中小企業、多種多才な人材の集積など多くの特長を有しています。一方で、大都市であるがゆえの膨大なエネルギーや資源の消費、環状道路の未完成ゆえの交通渋滞がもたらす多大な経済損失や環境の悪化、悪質な犯罪の発生、合計特殊出生率の低さや高齢化の急速な進展など様々な課題が先鋭的に現れています。新政権の下では、「はじめに言葉ありき」の柔軟性・機動性を欠いた国政運営が見られますが、この大都市東京を預かる都政には一刻の遅滞も許されません。

一昨年来の経済危機に対しては数次にわたり補正予算を編成するとともに、二十一年度予算での対応により、中小零細企業の資金繰りを支え、離職を余儀なくされた方や厳しさの増す学生の就職を支援してまいりました。新型インフルエンザにも、発生の前からその危機を予見し、機動的な対策を重ねております。

また、東京を美しく安全で住みごこちの良い世界の範となる都市へと成熟させる「十年後の東京」計画も着実に進めております。

三環状道路の整備では、本年三月には中央環状新宿線が全線開通して東名高速から東北道・常磐道などへのアクセスが向上します。羽田空港は、十月に新滑走路が完成し発着枠の拡大が図られるとともに、国際化が大幅に進展します。日本の牽引役である首都東京の都市機能が一段と高まり、我が国経済の活性化に大きく寄与するに違いありません。

さらに、先進的な環境政策を一段と加速させます。四月から世界初の都市型キャップアンドトレードを開始し、CO2排出量の削減に大きく踏み出します。街路樹の倍増や校庭の芝生化なども進め、日本と世界の環境政策をリードし、東京を緑溢れる環境先進都市へと進化させてまいります。

日本の行く末を左右する少子化についても、社会全体で出産を喜び子育てを応援するために、重層的・複合的な施策を渾身の力で展開いたします。

東京の持つ可能性と潜在力を信じ、目前の危機に的確に対応するとともに、将来を見据えた政策を強力に展開し、日本と世界の未来を東京の手で切り拓くべく、全力で都政運営にあたってまいりますので、皆様のご理解とご協力をお願いいたします。