2011年1月1日
東京都知事 石原慎太郎

平成二十三年 知事年頭所感

明けましておめでとうございます。

新しい年が皆様にとって希望に満ちた幸多き年でありますよう、心からお祈り申し上げます。

東京の人口は、昨年四月に千三百万人を突破しました。この国家に匹敵する大都市東京は、イギリスの有名な都市専門誌『モノクル』において世界で住みやすい都市ランキングの第四位となっています。上位三位は人口、経済規模においてはるかに小さく、東京は世界で一番住みやすい大都市といえます。都は、この現状に満足することなく、現状の課題を克服し、更なる成熟を目指した歩みを進めています。

昨年十月には羽田空港が本格的な国際空港として生まれ変わりました。世界との新たな人、物、情報の交流が我が国を活性化させ、東京に観光客やビジネス客を世界中から招くなど、重層的な効果が期待されます。加えて「国際コンテナ戦略港湾」として選定された京浜港の整備を進めるとともに、三環状道路をはじめとする道路網の更なる充実を図り、陸・海・空のネットワークにより都市機能を一層向上させることで、わが国経済の牽引役を担ってまいります。

また、世界初の都市型キャップアンドトレードにより、CO2排出量の削減を進めるとともに、街路樹の倍増など、日本と世界の環境政策をリードし、東京を緑溢れる環境先進都市へと進化させていきます。その快適な環境の下で、日本を代表するスポーツイベントに成長した東京マラソンを開催するなど、スポーツ振興でも日本を先導していきます。

さらに、都民・国民が直面する緊急課題に果断に対処してまいります。意欲ある若者の就業を支援するとともに、円高など経済環境の変化に苦しむ小零細企業の支援に万全の手立てを講じていきます。少子化の打破に向けても重層的、複合的な施策を展開してまいります。

二十一世紀の最初の十年、世界は経済の停滞と混乱、異常気象や地震・津波などの天災が相次ぎ、混沌とした十年となりました。そのような中、日本は今や国家そのものが沈みつつある危機的状況にあります。昨年、日本人の価値観が平和の毒に侵され、金銭欲に傾斜したことを物語る象徴的な事件が相次ぎました。また、国政は、国益がぶつかりあう国際社会で厳しい現実を突きつけられ、財政をはじめ国家としての大局観をも欠いた状況にあります。今こそ、日本人一人ひとりが本来もっていた節度、自己犠牲、責任感などを建て直し、人の根幹から政治を、国家を再生する時です。

そのためには、日本の頭脳部・心臓部であり、生きた現場を持つ東京が問題の本質を捉えた具体的行動により範を示していく必要があります。

東京の持つ可能性と潜在力を信じ、目前の危機に的確に対応するとともに、上下水道など優れた技術の国際展開など将来を見据えた政策を強力に推進し、日本の未来を東京の手で切り拓くべく、都政の運営にあたってまいりますので、皆様のご理解とご協力をお願いいたします。